前任者がいなくなったAccessデータベースを引き継ぐ手順
Access で作られた顧客管理や受発注の仕組みを引き継ぐことになった。作った本人はもういない。マニュアルもない。とりあえず毎日動いてはいる。 ——このとき、最初にやるべきことは中身を調べることではありません。
Access は Excel と違い、開いただけでファイルの中身が書き換わります。 そして複数人が同時に使っている状態でファイルをコピーすると、壊れたコピーができあがります。順番を間違えると、調べる前に壊してしまいます。
第1段階: 壊さない状態を作る(当日中に)
1. 今、誰が開いているかを確認する
Access のファイルと同じフォルダに、拡張子が .laccdb(古い形式なら .ldb)のファイルがないか見てください。これは「今、誰かが開いている」ことを示すファイルで、中にはパソコン名とユーザー名が記録されています。メモ帳で開けば読めます。
このファイルが残っているうちは、まだ誰かが使っています。全員に閉じてもらってから次に進んでください。 誰も開いていなければ、このファイルは自動的に消えます。
2. 全員が閉じた状態で、コピーを取る
- 誰も開いていないことを確認してから、ファイルを別の場所にコピーする
- 日付を付けた名前にする(例:
顧客管理_20260802_保全用.accdb) - コピーは読み取り専用に設定し、以後は絶対に開かない
- 可能であれば、コピー先は別のパソコンか外付けドライブにする
使用中にコピーすると、書きかけの状態が保存され、後から開けなくなることがあります。「バックアップを取ったつもりが、壊れたファイルだった」という事態を避けるため、この順番は守ってください。
3. 現在のバックアップ体制を確認する
ここで一度立ち止まって、次を確認してください。
- バックアップは誰が取っているか。担当者が退職した後も動いているか
- どこに保存されているか。同じサーバの同じフォルダなら、事故のときに一緒に消えます
- 戻したことがあるか。取っているが戻せない、というのは非常によくあります
引き継ぎで最初に整えるべきはバックアップです。中身の理解より先です。バックアップさえあれば、その後の作業で多少失敗しても取り返せます。
第2段階: 構成を把握する
4. ファイルが分かれているかを確認する
きちんと作られている Access は、データを入れる側(バックエンド)と 画面を表示する側(フロントエンド)の2つのファイルに分かれています。
Access を開き、テーブルの一覧を見てください。テーブル名の左に矢印のアイコンが付いているものがあれば、それは「リンクテーブル」——つまり実際のデータは別のファイルにあります。
分かれている場合、各パソコンにフロントエンドのコピーが配られているのが正しい運用です。ただし現実には「みんなが共有フォルダの同じファイルを開いている」ことが多く、これは動作が遅くなるだけでなく、ファイル破損の主要な原因になります。
5. リンクテーブルの接続先を確認する
リンクテーブルがある場合、その接続先を必ず記録してください。 Access の「外部データ」タブから「リンクテーブル マネージャー」を開くと、接続先のフルパスが一覧で表示されます。
ここに書かれているのが次のような形式なら、注意が必要です。
\\SERVER01\共有\...— そのサーバは今も稼働していますか。更新予定はありますかZ:\データ\...— ドライブレターは危険です。 パソコンごとに割り当てが違えば、そのパソコンでは動きませんC:\...— 特定のパソコンの中を指しています。そのパソコンが壊れたら終わりです- ODBC 経由の接続 — 接続先のデータベースのバージョンと管理者を確認してください
6. どのパソコンに何があるかを一覧にする
Access の引き継ぎで最も見落とされるのがこれです。 ファイルだけ引き継いでも動きません。次を紙に書き出してください。
| 確認する項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 使っているパソコンの台数と設置場所 | 入れ替え時に漏れると、その部署だけ業務が止まります |
| 各パソコンの Access のバージョン | バージョンが混在していると、片方でだけ不具合が出ます |
| 32bit 版か 64bit 版か | 古い Access の資産は 32bit 前提のものが多く、64bit で動かなくなります |
| ネットワークドライブの割り当て | Z ドライブが人によって違う場所を指していることがあります |
| ODBC データソースの設定 | パソコン側の設定なので、新しいパソコンには引き継がれません |
第3段階: 人に聞く
ファイルを見ても絶対に分からないことがあります。前任者がいなくても、使っている人は残っています。次を聞いてください。
- この仕組みで、どの業務のどこを処理していますか
- 使っているのは何名で、どの部署の方ですか
- いつ動かしますか(毎日 / 月末 / 締め日)。決まった時間帯はありますか
- 止まると、何がどこまで困りますか。手作業で代替できますか。何時間かかりますか
- 過去に調子が悪くなったことはありますか。そのときどう対処しましたか
- 「この操作だけはやってはいけない」と言われていることはありますか
最後の項目は特に重要です。「月末処理の前にこのボタンを押してはいけない」といった暗黙の運用ルールが、どこにも書かれずに口伝で残っていることがよくあります。
やってはいけないこと
最新の Access で開いて「変換しますか」に「はい」と答える
古い形式(.mdb)のファイルを新しい Access で開くと、形式の変換を促されることがあります。ここで変換すると、
古い Access からは開けなくなります。
他のパソコンがまだ古いバージョンだった場合、その全員が使えなくなります。
必ず保全用のコピーを取ってから、かつ全パソコンのバージョンを確認してから判断してください。
「最適化」を安易に実行する
Access には「最適化/修復」という機能があり、ファイルサイズを小さくできます。有用な機能ですが、実行前には必ずバックアップを取ってください。 すでに軽微な破損があるファイルに実行すると、破損が確定することがあります。
とりあえずデータを消して軽くする
「古いデータは要らないだろう」と過去分を削除するのは、引き継ぎ直後にやることではありません。帳票や集計が過去データを参照している可能性があり、削除の影響は数か月後の集計で発覚します。
ここまでで見えてくること
第2段階まで進めば、「作り直しが必要かどうか」の判断材料はおおむね揃います。多くの場合、必要なのは全面的な作り直しではなく、 特定のパソコンへの依存を外すことと バックアップ体制を整えることの2つです。これだけで、当面の不安はかなり解消します。
なお、Access のフォームやレポートに書かれた処理(VBA)は、ファイルの中身を機械的に調べるだけでは取り出せません。実際に画面を開いて確認する必要があるため、そこは実機を見ながらの作業になります。
調査からお引き受けします
ファイルをお預かりして、テーブル構成、保存されているクエリ、接続先のパス、危険な箇所を報告書にまとめます。引き継ぎのために社内で確認すべき事項も、質問の形で一覧にしてお渡しします。初回調査 5万円(税別)、ご発注時は改修費から全額差し引きます。
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